38歳ゲイリーマンのサバイバル

この記録がいつか自分自身の・誰かの道標になりますように

【Webiar】九州×地域活性化プロジェクト

藻谷浩介先生が登壇するWebinarを聴講した。

題目は『九州の強みとこれからの観光戦略』。

先生とはとあるNPO主催するツアーで2015年にお会いして釜石、大船渡、陸前高田そして気仙沼とご一緒させて頂いた。行動力と洞察力、そしてウォームハートを兼ね揃えた本当に立派な人。今日も、社会や自分の人生に資する大きな示唆を貰うことができた。

 

◆要旨

【コロナについて】

東日本大震災後を思い出そう。10年前のあの時、誰もが今の福島県や東北地方の復興を想像できなかった。だからコロナ禍だって終わる時がくる。

・コロナ禍が終わるきっかけはワクチン接種が流行を抑える一定水準にまで達するタイミングだろう。しかしコロナウイルスは「撲滅」できない。台湾や中国だって、あれだけ対策していてもウイルスは根絶できていない。数こそ少ないが誰かの体の中で無症状で生き残り、たまに表に出てくるのがウイルスというものだから。

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©藻谷浩介
 

【旅行とコロナの関係】

・GO TOをめぐる誤解により「旅行≒悪」となっているが、違う。移動自体でコロナは感染しない。もしそうなら2020年1-2月の時点で満員電車天国だった日本は中国以上に感染爆発しているはずだが、そうなっていない。駅員や空港職員の感染爆発だって発生していない。

・旅行自体が悪いのではなく「密な距離」で「大声(飛沫を飛ばし)」で「換気の悪い場所」に身を置くことが悪いのだ。だからスタイルを変えれば旅行で感染拡大につながることはない。

 

【コロナ終息後のインバウンド&九州】

・インバウンド市場はコロナ収束後、再拡大する。来るなと言っても来てしまうくらいポテンシャルが有る。2019年に960万人だった訪日中国人客だが、人口当たりの訪日旅行の割合がタイ並みに上がればその数は1,711万人へと膨れ上がる。他の国でも同様だ。

・香港台湾韓国中国から最も近い日本に位置するこの地の利こそ九州の強みだ。近所の公園に行くイメージで日本に来る人達が九州の周りに沢山住んでいる。

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©藻谷浩介

 

・でもインバウンド市場は疫病・戦争・災害・経済危機等をきっかけに再び需要が激減する。だから、景況の良い時にキャッシュをきちんと蓄え、客がある程度減っても生き残れる事業を構築していく必要がある。お客はこれからも増えていくけど、薄利多売に走らない方がいい。

・そもそも「安い」を売りにするなら日本は負ける。美味しい料理が食べられてリラックスできて雄大な自然が見られる場所で、日本より安い場所なんて世界にゴマンとあるのだから。

・だから訪日客の上澄み2割の「上客」を取ろう。「富裕層」だけでなく「長期滞在客」も「上客」だ。 選択と集中、だ。利益の8割は顧客の2割である「上客」からくる。例えば、熊本の人吉を本当に評価してくれ何度も来てくれる人の評価を高めよう。彼らこそが「本当の強み」を知ってる。 

・お客様が欲しいのは、観光事業者側が作った「ストーリー」じゃなくて「言い訳」。誰かに「なんで九州なんかに?」と聞かれた時に「だって○〇があるんだもん」とお客さんが九州を選ぶ「言い訳」になるものを提供してあげよう。でも、上述の通り「安い」はダメ。

・五感、味、匂い、風水、空気で九州の風土を感じられるか?地元の人は地元の歴史や風土を知っているか?当たり前に「有る」ものが旅行客にとっては「有難い」ものなのだ。それを発見していこう!

  

◆感想

・GOTOについて

旅行自体に罪はないのは大いに納得できる。でも人間は欲に弱い動物だ。旅行に行けばきっと一定数はタガが外れ、大声で密な環境で大騒ぎするし、夜の繁華街で密な関係を持つ店にだって行くだろう。GO TOを同じように再開すれば経済は回りだすが、また感染拡大の種となることは明白だ。だから「旅行スタイルを変えるインセンティブ」が必要なのだと思う。例えば定員制限を行った施設にGOTOの対象を絞る、とか事業者側の対策強化も必須だろう。

 

・インバウンドについて

薄利多売から上客を狙おう、客数が減っても存続できる事業を作ろう、というのは納得がいく。問題はここから、どう知恵を絞って「高いお金を払う言い訳」が立つ高付加価値なものを生み出せるかだ。ここが一番難しい。僕が脱サラした後にできたらいいなと思っている「首都圏の田舎ステイケーション施設」なんて似たようなものが腐るほどあるよな・・・。余談だけど、一人当たりGDPで韓国に抜かれたことに象徴されるように、悲しいが近隣諸国の旅行者の方が日本人よりお金を持っていることが増えると思う。少し上客を狙うだけで、我が国観光産業にとっては大きな収入になるだろう。